Inleiding tot de R-statistiek

統計学全般に関する備忘メモの書庫(三中信宏)

「本日の質問(6月16日)」

今日の講義では,処理平均の差に関する多重比較の原理とさまざまな補正法について説明しました.

質問です:

【質問】帰無仮説や対立仮説や検定統計量の意味が結局わかりません.

データをとる目的は対象に関するある性質を推論することにあります.ある実験を実施したとき,実験要因の効果があったのかなかったのかを調べるのが分散分析であり,特定の処理ペア間で有意な差があるのかないのかを検定するのが多重比較です.帰無仮説は「違いはない」という立場からデータのばらつきを説明しようとします.一方,対立仮説は「違いがある」というスタンスでの説明を試みます.いずれの説明がリーズナブルであるのかを判定するために,私たちは得られたデータから検定統計量(分散分析ではF値,多重比較では処理平均差)を求め,いずれの仮説のもとでよりリーズナブルに説明できるかどうかを比較検討する--これが統計的検定の基本的な考え方です.

もうひとつ質問があります:

【質問】帰無分布を出すのには実験で得られたデータの各処理平均の差から求めればよいのか

いいえ,多重比較に関する帰無分布はデータ数で決まってしまいます.得られたデータの値は検定統計量の計算にのみ必要になります.