Inleiding tot de R-statistiek

統計学全般に関する備忘メモの書庫(三中信宏)

「多変量正規分布の密度関数」

前回の講義に関して,こんな質問がありました:

p変量正規分布がなぜあのような形で表されるかわかりません.

p変量の式で,expの項を一部転置行列にしているのは,expのpの項を無次元の数にするためと考えてOKですか?

多変量確率分布は,思い切って「ベクトル・行列」で統一的に表記してしまうのが,結果的にはわかりやすいのかもしれません.前回の講義では,多変量の密度関数を要素に切り分けて説明したので,“木”は見えても,“森”は見えなかったかも.

p変量から成る列ベクトルXに対して,その平均ベクトルE(X)はすなおに期待値計算できます.一方,分散共分散行列は,偏差ベクトルX-E(X)とその転置ベクトル[X-E(X)]' の積の期待値E{[X-E(X)][X-E(X)]'}と表記されます.この積は列ベクトルと行ベクトルとの積ですから,p×p型行列になります.この書き表し方だと一変量でも多変量でもまったく同一になります.

多変量確率分布で,p=1の「特殊な場合」が一変量確率分布であるという視点の移行が見通しをよくすると思います.

後半の質問ですが,指数部分は線形代数でいう「二次形式」です(分散共分散行列によって形状が決まる確率楕円を記述します).結果としてこの部分が“無次元数”になっていることは確かですね.